妊娠と年齢の関係 38歳の壁

加齢 家族づくり

「女性の妊娠にはタイムリミットがある。精子とは違って、卵子の数には限りがある。」

といったことを聞いたことがある、という方は少なくないと思います。これは紛れもない事実で、40歳目前に不妊治療を始めてから、この現実を突きつけられてなかなか結果で出ず、ショックを受けるヘテロカップルの方もいらっしゃいます。

一生分の卵子の数は生まれた時点で決まっていて、最初は700万個の卵子が卵巣のなかにありますが、毎月の排卵で数百個ずつなくなり、20歳で15万個、35歳で2万個、45歳で3000個、卵子がなくなると閉経になります。全身の細胞が老化していくように、加齢とともに卵子の質も落ちてしまい、赤ちゃんまで育つ確率も低くなります。

実際に、僕が勤めている病院でも、20代の女性の卵子と40代の方の卵子では、受精卵になってからの育ち方が全く違うことを実感しています。

また、高齢になるほど妊娠中に合併症を起こしやすく、出産時は体力を大きく消耗するので命の危険もあり得ます。

なぜか脅しているみたいになってしまいましたが…やはり妊娠は早ければ早いほど良い、というのが実際のところです。

しかし、そのせいでむやみに焦ってしまうのは、本末転倒な気がしています。

ましてやFtMは、自分の治療を終えて戸籍変更をしてから、結婚ができるようになるので、子育てのことを考えるまでに時間がかかるひとも多いと思います。

パートナーと不安な気持ちのまま過ごす必要がないように、データをもとに冷静に現実と向き合っていけたらと思います。

目安は35~38歳

下のグラフは、全国で不妊治療を受けている方の妊娠率と流産率についてまとめた、日本産婦人科学会の統計データです。
折れ線と年齢の変化を見てみると、35歳頃から急激に流産率(紫色の線グラフ)は増加し、妊娠率(青色)が低下しています。つまり、35歳以降から出産できる可能性が急激に下がっていくということを意味しています。

日本産婦人科学会のデータより
https://plaza.umin.ac.jp/~jsog-art/2017data_20191015.pdf

しかしこれは、35歳以降の女性は全く妊娠できない、というわけではもちろんありません。

ただ、35歳以降から妊娠率は低くなり、卵の在庫は限られてくることから、不妊治療をする場合は、シリンジ法や人工授精よりもさらに高い妊娠率が期待できる高度生殖医療(体外受精)を積極的に検討する必要がある、ということと、そうすぐには妊娠できないもんなんだ、という意識をカップルで共有しておくと良い、ということだと思っています。

また、上のグラフはあくまでも統計であるため、月経周期が不規則な方、生理痛がひどい方などは、不妊の原因になるような婦人科系の疾患がある可能性が高いので、早めに不妊治療の病院で検査した方が良いと思います。

精子も年齢の影響を受ける

また、女性だけが年齢の影響を受けるわけではないということも最近分かってきています。

個人差はあれど、男性も35歳を過ぎると精子の濃度や運動率、受精卵になったあとの成長率が低下していくことが分かってきています。

また、不妊の約半分は男性(精子側)にあるとも言われます。

なかなか妊娠せず心が折れそうなときもあると思いますが、パートナーの方は、決して自分ばかりを責めないでほしいと思っています。FtMたちは隣にパートナーがいてくれるだけでも幸せなので、家族が増えたらそれはそれでラッキー、ぐらいの気持ちで取り組んで頂けたら嬉しいです。

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