『AIDで生まれるということ 精子提供で生まれた子どもたちの声 』を読みました。

家族づくり

まさおです。
僕には男兄弟がいるので、
パートナーと将来子どもをつくるとしたら精子提供かな?と漠然とした考えがありました。

じゃあ、
精子提供で授かった子どもはどんな人生を歩むんだろう?
告知はした方がいいのか?するとしたら何歳頃?

そんな疑問があったので、AIDについての本を読んでみました。

※AIDとは
非配偶者間人工授精。
一般的に、夫以外の第三者の精子を使った人工授精のこと。
無精子症など男性側に不妊の原因がある夫婦が子どもを持ちたいときに、
この方法が選択されることがあります。
精子がないFtMカップルも、この方法が選択肢の一つとなります。

『AIDで生まれるということ 精子提供で生まれた子どもたちの声』
非配偶者間人工授精で生まれた人の自助グループ(DOG: DI Offspring Group) 、 長沖 暁子 著

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AID(非配偶者間人工授精)によって生まれた方達によって、
・幼い頃から感じていたことや、
・自分がAIDで生まれたことをカミングアウトされたときのこと、
・大人になってからAIDという技術に対する考え
などが綴られています。

正直、
精子提供を選択肢の一つにすること自体を根本的に考え直すことになる内容でした。

告知されたとき、本人はどう感じたのか?

父親が遺伝性の病気を発症したことをきっかけに、
自分がAIDによって生まれたことを母親から告知された方が、
当時の気持ちについて書いてくださっています。

とてもショッキングな内容だったので、抜粋させて頂きます。

自分が父とは血がつながっていなかったという事実はとてもショックで、しかしそれ以上にその事実をこれまで隠されてきたということが辛いことでした。自分がどのようにして生まれたのか、誰と血がつながっているのかということは私にとってはとても大切なことなのに、その大切なことを親に隠されていたということがとても辛いことでした。
(中略)
またこのときとても強く感じたことは、それまでの自分の人生がすべて親の嘘の上に成り立っていたものなのではないかということです。それまで自分が絶対だと信じてきたものが突然違うと言われてしまうと、その価値観の上に成り立たせてきたものすべてが崩れてしまいます。それまでの自分の経験や思い出など、その土台となる部分が崩れてしまうと、その上に積み重ねてきたものすべてが嘘のように感じられてしまいます。

AIDで生まれるということ 精子提供で生まれた子どもたちの声』非配偶者間人工授精で生まれた人の自助グループ(DOG: DI Offspring Group) 、 長沖 暁子 著

当事者の方にとってかなり衝撃的で、
信頼していた両親に裏切られるような気持ちになる出来事であったことが伝わってきます。

「土台となるようなものが崩れる」
というような表現は、
他の方の文章の中にもみられました。
自分の存在そのものが脅かされるような、
アイデンティティが揺らぐような感情でしょうか。

これを読んだ僕は、
「こんなことを自分が選択してしまっていいのだろうか・・・」
そう感じました。

告知はするべきか?

告知については、
この本の中のすべての方がするべきだと仰っていたのがとても印象的でした。

「AIDを『隠し事』にせず、
 子どもがこの事実を受け止めて乗り越える力を信じてほしい」

「知らない方がいい出自だと言う方が失礼だと思う」

「子供を傷つけないために事実は伝えない、
 という考え方は果たして本当に子供の為か?」

親自身が、AIDで、つまり第三者の手を借りて子どもをもうけたことに自信を持てず、
堂々と子どもに伝えることができない、ということがあるようです。

また、父親との関係に違和感を感じていた、というような内容もいくつかみられました。

「家庭内で秘密があることから生じる緊張感や違和感は子供には必ず伝わっている」

第3者の精子を使って子どもを作ることへの後ろめたさ、
生まれた子どもとの間に一方的に作っている壁。
そういった感情は確実に、子供に何かしらの違和感として伝わるようです。

告知の時期について

もし私が親の立場だったら、おそらく一〇歳前後、思春期に入る前、親子の関係がいいときに、率直に話すでしょう。どれだけ子どもがほしかったか、あなたに会えてうれしいか、父親とは血はつながってなくても私たちは家族だし、あなたは本当の子どもだよ、と言うかもしれません。告知というと大げさかもしれませんが、家族の歴史、親子の関係の中に当たり前のように存在する事実としてあったらいいと思いますし、その後も折に触れて話すでしょう。ふつうAIDの子どもは一人っ子で、この事実を一人で受け止めるしかないのですが、そのときは、親は隣りにいて子どもの気持ちに寄り添っていてほしいと願わずにはいられません。AIDをどうとらえるかは人それぞれですが、AIDがなければそもそも私たちは存在しないわけですから、親がそれを否定してしまっては、子どもは自身の存在そのものを否定された気持ちになってしまうでしょう

『AIDで生まれるということ 精子提供で生まれた子どもたちの声』非配偶者間人工授精で生まれた人の自助グループ(DOG: DI Offspring Group) 、 長沖 暁子 著

告知については、
子どもが自分で様々な選択をしていく前に、なるべく幼いうちに、
そして親が子どもの感情に向き合う体力があるうちに話すのがいいようです。

一般的に、養子に対する告知についても、
「幼いころから、誕生日のお祝いや家族旅行など、家族が一番幸せなときに伝える」というのが基本と言われているそうです。

また、
精子提供によって生まれた子が将来パートナーを持ち、
子どもをもうけたときに、「自分の体はどのような遺伝性の病気をもっているのか?」という心配にも影響することも、なるべく早く告知をした方が良い理由の一つかなと感じました。

なぜ子どもが欲しいのか、家族とは何か

冒頭の、当事者の方の心情を読んだときは、
AIDという選択肢自体を考え直しました。

しかし、重要なことはAIDという選択肢の是非ではなく、
子育てに関わる人(達)が納得してそれを選択出来ているかどうか、
ということなのではないかと思います。

なぜAIDでないといけないのか?
里親など他の選択肢ではダメなのか

後ろめたいと思う方法で子供を作ったならば、
生まれてきた子どもを後ろめたい存在してしまいますが、

自分とパートナーが納得した上で選択して、
子どもにも堂々と話すことが出来れば、
子どもの味方側につくことができるのでは、と思いました。

また、本の中では、「普通の家族」という言葉とともに、
セクシャルマイノリティのカップルに関しても言及されていました。

世間でいわゆる「普通」とされているシスヘテロカップルの場合と、
我々セクシャルマイノリティのカップルの場合とでは、
生まれてくる子の「普通の家族」に対する考え方も違ってきそうです。

こんなことを言うとおこがましいかもしれませんが、
本の中で、当事者の方のアイデンティティが揺らぐような感覚について読んだとき、
僕が自分をトランスジェンダーだと知る前の、自分が一体何者なのかわからない、
という感情に少し似ている部分があるかもしれない、と感じました。

できれば僕のセクシャリティについても話したいとおもいますが、
どのように話すかどうかは、また別の悩みとして今回は残しておきます。

告知についてもっと詳しく

告知についてより詳しく書かれた本も紹介されていたので、早速購入しました。
また紹介できたらとおもいます。

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他にもおすすめの本などありましたら、教えていただけるととても嬉しいです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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